シレンスレ名作劇場〜走れTake〜

この物語はフィクションであり、登場する団体・人物・事件などの名称はすべて架空のものです


 Takeは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。Takeには政治がわからぬ。Takeは、ブラック企業の社員である。ほらを吹き、ひとりで遊んで暮して来た。けれどもローグに関しては、人一倍に敏感であった。

きょう未明Takeは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此(こ)のシレンスレにやって来た。Takeには夢も、希望も無い。女房は雷道なずな。18歳以上の、勝気な嫁と二人暮しだ。結婚式も間近かなのである。Takeは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばるスレにやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それからスレの路をぶらぶら歩いた。

Takeには竹馬の友があった。ア○カである。今は此のシレンスレで、糞ゲ廃人をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにTakeは、スレの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、外の暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、スレ全体が、やけに寂しい。のんきなTakeも、だんだん不安になって来た。

路で逢った若い視聴者をつかまえて、何かあったのか、三年まえに此のスレに来たときは、深夜でも配信者が配信していて、スレは賑やかであった筈(はず)だが、と質問した。若い視聴者は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて古参視聴者に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。古参視聴者は答えなかった。Takeは両手で古参視聴者のからだをゆすぶって質問を重ねた。古参視聴者は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。


「ラ○は、人を煽ります。」

「なぜ煽るのだ。」

「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんの人を煽ったのか。」

「はい、はじめは配信者のにゃ○を。それから、ど○むみならいを。それから、か○のひとを。それから、諸葛○先生を。それから、md○を。それから、ジノ○リ様を。」

「おどろいた。ラ○は乱心か。」

「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、新参の心をも、お疑いになり、少しく配信をしている者には、まず挨拶することを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、煽られます。きょうは、六人ディスれました。」

聞いて、Takeは激怒した。「呆(あき)れた王だ。生かして置けぬ。」

Takeは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の信者に捕縛された。調べられて、Takeの懐中からはハンター×ハンター〜幻のグリードアイランド〜が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。